タタリアン
 朝になってレスキュー隊が池の
底に沈んでいる水死体を発見し
た。
 毎年同じことが繰り返されてい
るので処理は手際よく済まされ
る。
 水死した人と一緒に泳いでいた
仲間の話から事件性はないと判断
された。
 由香のグループは会話すること
もなく、テントを片付けて帰る準
備をしていた。
 気まずい雰囲気に耐えきれなく
なった由香が淳也に、
「何怒ってるのよ。森で迷って偶
然通りかかった管理人さんに助け
てもらっただけじゃない」
「……」
「へんなヤキモチやくのもいい加
減にしてよ」
「お前はやった後、態度で分かる
んだよ」
「何よそれ。ひどいこと言わない
でよ」
 由香は泣きながら走って行っ
た。それを見ていた2人の女友達
が由香の後を追った。
 淳也はひとりで自動車に乗り
帰った。
 由香は女友達の恋人が運転する
自動車の後部座席に乗せてもらっ
て帰った。

 龍神乃池の水死事故について対
策が話し合われたが、さすがに度
重なる事故で今シーズンは応急処
置として池の周りを柵で囲い、近
いうちに祠を建立することになっ
た。
 健吾も柵の設置作業に参加し
た。
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