タタリアン
 健吾の乗った自動車は龍神乃池
の近くにある駐車場に止まり、健
吾は懐中電灯を持って降りた。
 龍神乃池に現れた健吾は立ち止
まり、赤く染まった池を凝視し
た。
 すると池に泡が立ち始め水面が
盛り上がると、池の大きさにせま
るぐらいの胴回りがある巨大な龍
が一気に天高く昇った。
 龍が昇る途中、健吾を光に包
み、龍の体内に取り込んだ。
 一気に空高く上り宇宙空間に静
止した龍は、徐々に星間列車のよ
うな宇宙船に変形した。
 宇宙船の内部で人間ではない知
的生命体に囲まれた健吾が横にな
り浮遊していた。
 健吾の体は半透明に変わり、体
内で赤や青い色をした無数のア
メーバのような臓器が触手のよう
なものを盛んに動かしていた。
 知的生命体は健吾の下腹部から
桃の種を大きくしたような硬くし
わのあるモノを取り出した。
 健吾の側にいたもうひとつの知
的生命体が、自分の体からブドウ
の一房を大きくしたようなやわら
かく、生きているように胎動をし
ているモノを取り出すと、その中
で無数の微生物がうごめいてい
た。
 それを健吾の下腹部に埋め込ん
だ。
 健吾の半透明の体が元に戻る
と、別の男性に変わっていた。
 健吾の下腹部から取り出された
モノを知的生命体が開けると、そ
の中にあった液状のモノを抽出し
小さな雲のような浮遊気体に移し
た。それは無数の女性の卵子で、
浮遊気体に入れると将来、大人に
なる姿がひとりずつ空間に実体映
像として投影され、男女に選別さ
れていった。

 何も知らない里美は入れ替わっ
た健吾の腕枕ですやすやと眠って
いた。
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