タタリアン
 美咲は自分でキグルミを着て事
件の手がかりを探そうと、警察に
何度も足を運び、キグルミを返し
て欲しいと頼んだ。
 ある日、美咲は警察が近いうち
に実地検分することを知り、自分
にキグルミを着させて欲しいと頼
んだ。
 警察では美咲がミイラになった
キャンペンガールと歳も背格好も
近かったので特別に許可すること
になった。

 事件当時の状況が再現された場
所で、美咲はキャンペンガールが
着ていた水着と同じものを着て心
拍数や脳波を調べるセンサーを体
につけキグルミを着た。そして、
フザキの新型ファミリーカーの横
に立ち、子グマのぬいぐるみを
配ったり体を動かす動作を繰り返
した。
 美咲の心拍数や脳波のデータが
記録されていく。
 こうして長時間の検証をしたが
体調に異常はなかった。
 美咲は少しホッとしたが、手が
かりはつかめず、亡くなった父親
も倒産した工場も返ってはこない
空しさを感じていた。

 デパートのプリクラコーナー。
 2人の女子高生が入ると子グマ
のぬいぐるみが置いてあった。
 女子高生は写真を撮るときのア
イテムだと思い、子グマのぬいぐ
るみを持ってポーズを決めた。
 フラッシュが光った瞬間、2人
の女子高生はミイラになって倒れ
た。
 女子高生が手に持っていたはず
のぬいぐるみはどこかに消えてい
た。
 警察が調べるとプリクラ写真に
子グマのぬいぐるみが写ってい
た。すぐに美咲に連絡があり、警
察で事情聴取がおこなわれた。
 子グマのぬいぐるみとキグルミ
はすべて国産の素材を利用し、コ
ズミック工房の従業員がミシンと
手作業で東部国際モーターショー
のために新しく作ったもので電子
部品などは使っていないありふれ
たものだった。
 
 子グマのぬいぐるみが10個、
回収され未回収は12個になっ
た。
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