タタリアン
 美咲は気がつくと雲の上を浮遊
しているような錯覚をする空間に
うつ伏せで倒れていた。
 周りには、あの200年前の砂
浜で潜水艇に美咲を連れ込んだ知
的生命体がいた。
 美咲が起き上がろうとしても体
が動かせず、雲の切れ間から地上
が見えた。
 美咲の顔の辺りの床はディスプ
レイのようになっていて映像が
次々に変化した。
 その映像は地上のいたる所が
光っていて、それは建物が燃えて
いる様子だった。
 昔の西洋の建物や城が民衆に
よって焼かれていく。
 軍隊と銃を手にした民衆との戦
い。
 貴族のような人達が民衆に捕ま
り連行される。その民衆の中に美
咲が助けた金髪の青年もいた。
 美咲は警察で見た歴史の資料を
思い出し、1789年に始まった
フランス革命の様子だと気づい
た。
(あの青年もフランス革命に立ち
上がった民衆のひとりだったの
ね)
 美咲は青年を助けたことが無駄
ではなく、少し嬉しかった。
 しばらくフランス革命の様子を
見た美咲は元の場所に戻してもら
おうと、知的生命体の方を向い
た。
「あの青年を助けてほんとに良
かったわ。見せてくれてありがと
う。もういいわ、元の場所に戻し
て」
 美咲の笑顔が真っ白になって
いった。
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