タタリアン

－絵－

　新興住宅地に売り出し中の北欧
風一戸建て住宅があった。
　室内には家のデザインに合わせ
たインテリアも揃っていて休日に
なると多くの見学者がやって来
た。しかし、１ヵ月たっても２ヵ
月たってもいっこうに売れない。
　販売担当の長内隆文は焦ってい
た。
　入社して３年、初めて企画をま
かされて自分が住みたいと思った
夢の家を提案し、見学者にも好評
なだけに、なぜ売れないのかさっ
ぱり分らない。
　そこで隆文は恋人の平井絵里を
連れて来てどこかに問題点がない
か見てもらった。
　絵里は楽しそうに部屋を見て、
「そうね。誰かが生活してるって
感じがないわね。花とか飾ったほ
うがいいんじゃない？」
　たしかに部屋はきれいに整って
はいたが、ホテルの客室ようなよ
そよそしさがあった。
「そっか。すぐに花を用意する
よ。やっぱり来てもらってよかっ
たよ」
　最近、落ち込みぎみの隆文がそ
う言って目を輝かせているのが絵
里もうれしかった。
　隆文はすぐに花を用意したり、
子供部屋にはおもちゃなどを置い
て生活感がでるように気をつけ
た。

　まもなくその家は売れ、隆文も
ホッとした。
　それから隆文の企画する家は次
から次に売れ、会社でもトップの
成績を上げるまでになった。
　やがて隆文は絵里と結婚し、絵
里の希望したデザインの家を建て
た。