タタリアン
 隆文の仕事は順調で、現場確認
や出張が多くなり、絵里はひとり
で寂しい思いをしていた。そこで
気晴らしにカルチャーセンターに
行きアクリル画を習った。
 隆文が家に帰ってくるたびに部
屋に飾った絵が増え、絵のできば
えも徐々にうまくなって隆文を驚
かせた。

 こんな生活も3年が過ぎた。
 隆文は課長になり、部下に仕事
を任せて家に早く帰ることが多く
なった。
 隆文と絵里の夫婦仲はよかった
が、ただ一つの悩みは子供ができ
ないことだった。
 絵里は子供の絵を描いて部屋に
飾った。

 ある日。
 隆文の家の庭にどこからか青い
風船が飛んで来て落ちていた。
 その風船の紐には紙が結んであ
り、開いてみるとそれは小さい紙
に子供が描いた絵だった。
 裏に名前や住所らしいものが書
いてあったがかすれて読めなかっ
た。
 空からのかわいい絵のプレゼン
トに絵里は喜び、フォトスタンド
に入れて寝室に飾った。
 絵里はふと、いいことを思いつ
き隆文に話した。
「あなた、私ここで子供達に絵を
教えたいんだけど」
 隆文も子供は好きだし、いつも
寂しそうにしている絵里が元気に
なるのならと、
「いいね。やってみなよ」
 すぐにふたりは部屋の内装を変
えたり、絵画教室の開き方を調べ
て、近所の子供達を集めた。
 子供達はクレヨンや絵の具を使
い、自由に描いたり、色を決めて
描いたり、一つの図形をもとに
色々想像して描いりなどした。
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