タタリアン
 隆文は壁に貼った絵をはがし床
に広げた。そしてもう一度、風船
に結ばれていた絵を合わせてみ
た。
 小さな絵が大きな絵に取り込ま
れるように同化していった。
 すると絵の中の星が回転し未来
の都市が動き始めた。
 隆文と絵里はあ然と見ていた
が、子供達の描いた絵が動くのが
だんだん楽しくなってきた。
 しばらくすると地面が二つに分
裂した。
 星は回転しながら分裂を繰り返
した。
「これは」
 隆文がつぶやいた。
 絵に描かれたのは星ではなく生
物の成長過程だった。
 球体から魚のような形になり、
両生類のようになり、胎児になっ
た。
 胎児の小さな心臓は鼓動を始
め、それを見た隆文と絵里は感動
した。
「私の赤ちゃん」
 絵里はこの絵に描かれたのは自
分の子ではないかと感じ、お腹に
手をあててみた。
 しばらくすると絵は元の子供達
が描いた絵に戻っていった。

 次の日。
 絵里が産婦人科に行くとやはり
妊娠していた。
 
 今も宇宙のどこかで風船はさま
よっている。

終わり
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