タタリアン
-カラス-
 都会に住むカラスがしだいに増
え、ゴミを荒らし、人に危害を加
えることが問題になっていた。
 政府からカラスの実態調査を依
頼された野鳥観察官の菅崎周作
(28歳)は埋立地に集まるカラ
スを調べた。
 自動車の車内で双眼鏡をのぞき
込む周作。
 カラスは朝方、埋立地に30羽
ぐらい集まるとバラバラに飛び
立って行き、夕方になるとまた集
まり、ねぐらに帰って行った。
 その日の朝も周作は埋立地に1
羽また1羽とカラスがやって来る
様子を自動車の車内から観察して
いた。
 しばらくすると次々に集まって
くるカラスが、一箇所へ黒いかた
まりのようになって群れる異常な
行動を始めた。
 カラスは普段よりも多く集まっ
て来た。
 周作は見たことのないその様子
に、慌ててビデオカメラを取り出
し撮影した。
 するとすぐにカラスは一斉に飛
び立ち、そこに人が倒れていた。
 周作は誰もいなかったはずの埋
立地に突然、人が倒れていること
に、とまどいながらも自動車を降
り駆け寄った。
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