タタリアン
 そこには女子高生ぐらいの少女
が倒れていた。
 どこもケガをしている様子はな
く、周作はその少女の体をゆすっ
てみた。
 少女は意識を取り戻し、周作に
気づくとおびえた。
 周作がやさしく、
「大丈夫?どこも痛いところな
い?」
 少女はうなずいた。
 周作は少女に手を差し出し、
「念のために病院に行ったほうが
いい」
 少女は周作の手をつかみ、起き
上がった。そしてふたりは歩いて
自動車に向かった。
 周作は不思議そうに、
「あんなにカラスが集まったの
に、ケガしなくってよかったね。
君、名前は?」
「ミユ」
「僕は菅崎周作。カラスの観察を
する仕事をしてる人」
 ふたりは自動車に乗り込んだ。
 周作がエンジンをかけて、
「家はどこ?この近くなの?」
 ミユはうつむいたまま何もしゃ
べろうとしなかった。
 周作は困り顔で、
「よわったな。しかたない病院に
連れて行ってあげるよ」
 周作が自動車を走らせようとし
たその時、カラスがボンネットに
次々と降り立った。
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