タタリアン

　ある牧場で乳牛１０頭に無数の
カラスが襲いかかり食い尽くし
た。
　次の日の朝には鮮魚市場に無数
のカラスが現れ、すべての海産物
に被害がでた。
　また次の日には大規模農場へと
カラスの襲撃が続いた。

　周作は政府にカラスの異常な行
動は一時的な集団ヒステリーで、
危害を加えず見守ればやがて治ま
ると伝えた。
　政府は周作の話しを無視して機
動隊を出動させたが、体が硬直し
て死亡する機動隊員が続出した。
　周作は未確認のウィルスだとご
まかすのがやっとだった。

　日本全国のいたる所でカラスが
大量発生し、食べ物に関するあら
ゆる物が被害にあった。
　ただ、不思議なことに人への危
害は抵抗さえしなければ一切な
く、無視をしているようにさえ思
えた。
　まるでイナゴの大発生のように
カラスが大群で移動しているよう
だった。

　カラスは山にいる狸、イノシ
シ、キツネ、鹿、熊などにも襲い
かかり、都会にいるネズミ、野良
猫や野良犬まで食べつくした。
　政府の緊急輸入で食糧を運ぶ船
舶や飛行機も襲撃され、日本には
食糧が入って来なくなった。
　この食糧不足で自衛隊の活動も
停止し、カラスへの軍事的な対抗
策がとれなくなった。
　政府の無策に市民の怒りが増し
たが、周作はカラスが近いうちに
エサ不足で死滅すると説明し、冷
静に行動するように呼びかけた。