タタリアン
 しばらくたったある日の夜。
 寝しずまった平助の家に近づく
人影。
 月明かりに照らされた顔は不発
弾の注意をした消防団員だった。
 消防団員は玄関のドアをこじ開
け、なにくわぬ顔で入った。そし
て窓からの月明かりを頼りに家捜
しを始めた。
 消防団員は平助がひとり暮らし
で耳が遠いのをいいことに平気で
物音をたて、あたりかまわず散ら
かした。しかし金目の物がなかな
か見つからなかった。
 水槽が目にとまったので覗きこ
むと、見たこともない生き物が泳
いでいる。
 消防団員は手に持った包丁で水
槽を突っつくと両生類のような生
物が大きな口を開けて水槽のガラ
スに吸い付いた。
 ビックリして後ずさりする消防
団員。
 気味の悪い家に少し臆病にな
り、別の部屋に向かった。
 
 消防団員が別の部屋に入ると目
の前に黒い物があったが、月明か
りがとどかずよく見えないので大
胆にも蛍光灯をつけようと天井に
向かって手をのばした。すると青
白くぼんやりとお婆さんの姿が浮
き上がって現れた。
 消防団員は声が出せないほど驚
いて、息をするのも忘れて部屋を
出た。
 そして自分が部屋中に散らかし
た物に足をとられながら慌てて平
助の家から飛び出して逃げた。
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