ずっと、キミが好きでした。


「一緒に帰ろう!」


「いい、けど」


「やった」



私たちは教室を出ると、並んで廊下を歩いた。


隣を歩くれおから、ほんのりスカッシュ系の香りが漂って来る。


私の大好きな香り。


クリスマスにもらった同じ匂いの香水は、未だに使えないままでいる。


ネックレスも、大事に大事に引き出しにしまってある。


私の大切な宝物だ。



れおの隣を歩くのが好き。


歩きながら少しだけ口角の上がった優しい横顔を盗み見るのは、もっと好き。


目が合うと、れおは必ず笑ってくれる。


その笑顔が大好き。


そろそろ、伝えてもいいよね?


私の声で返事が聞きたいって、そう言ってたもんね。


れおがもし、まだあの時と同じ気持ちでいてくれているのなら、ちゃんと返事をしなきゃいけない。



「れ、れお……」


「…………」



チラリと見上げた端正な横顔は前を向いたまま、振り向く気配はない。


あれ?


聞こえなかったのかな?


こんなに近くにいるのに。



「れお」



そう思って呼び直してみたけど、れおは依然として声に反応することはなかった。


最近こんなことがよくあるけど、どうしちゃったんだろう。


どこか遠くを見つめるその横顔には、笑顔はない。



「れお?」


「ん?」



ブレザーの裾を引っ張ると、ようやくれおは私に気付いた。


目が合った瞬間、れおは取り繕うように笑みを浮かべる。


なんだかぎこちない気がするのは、気のせいかな。


やっぱりなんだか変だよ。


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