ずっと、キミが好きでした。
それぞれの未来
夏休みが明けて2学期に入ると、より一層受験ムードが濃くなった。
1学期までダラけていた子が急に休み時間まで勉強をし始めたり、夏休み中に塾に通い始めるクラスメイトが急増。
うちの中学は市立だけど、偏差値が高いことで有名。
特に私の学年はやんちゃな人より真面目な人の方が多くて、まるでみんなが競い合っているかのように勉強している。
「しずくは志望校どうするの?」
放課後、私の前の席に座るやっちゃんが振り返った。
その手には進路調査票が握られている。
「うーん……まだ迷い中」
「何を迷う必要があるの?しずくの成績なら、明倫学園は余裕じゃん」
やっちゃんこと柳井 亜子(やない あこ)は、中学1年の頃からの大親友。
美人でサバサバしているから、やっちゃんには遠慮なくなんでもズバズバ言える。
そして、逆もまたしかり。
「明倫学園、ね」
「なに?なんかありそうな言い方だね」
「別に、なにもないけど」
「ウソばっかり。しずくがそう言う時は、絶対何かあるんだから」
ごまかしてみたけど、やっちゃんにはいつもすぐにバレてしまう。
少しうつむくと、サイドに流したポニーテールがサラリと肩から落ちた。
「れおが……」
私はそこまで言って黙り込んだ。
れおから直接聞いたわけじゃないのに、勝手に言いふらしてもいいのかなっていう気持ちが湧き上がって来たからだ。