ずっと、キミが好きでした。
すると、その男の人は口元をゆるめて柔らかく笑った。
同い年くらいだろうか。
妙に落ち着きがあって大人っぽく見えるけど、どこかあどけなさの残る笑顔が幼さを感じさせる。
制服を着ているから高校生だとは思うけど、この辺じゃ見かけない制服だ。
深緑のチェックのズボンと、ベージュのネクタイを締めブレザーを着ている彼。
彫りが深くてパッチリ二重のまぶたが、すごく印象的だった。
彼は私の目をまっすぐに見つめ返しながら、逆に私に向かってヘアピンをどうぞと手で合図した。
いえいえと大げさに否定しても、彼は柔らかく笑って私に何度もそれを勧めて来る。
しまいには遠慮してなかなか取ろうとしない私の手に、無理やりヘアピンを持たせた。
「で、でも、あなたも欲しいんじゃ……」
なんだか、ものすごく申し訳ない気がするんだけど。
私が何を言っても彼は優しく微笑んでいるだけで、いらないことを手で必死に訴えて来た。
「しー、何やってんの?」
「ち、ちー!」
彼の後ろからひょこっと顔を覗かせたちーは、不思議そうに目を丸くしていた。
「あのね、このヘアピンを譲ってくれて……最後の1個だったのに、優しいよね」
「ん……?ヘアピン?」
言いながら、ちーは私の目の前にいた彼の顔を見上げた。
「って、京太(きょうた)じゃん!」
「え?ちーの知り合い?」
「知り合いっていうか、あたしの双子の弟」
「えっ!?ちーって双子だったんだ……?」
「そうだよ。言ってなかったっけ?」
うんと頷いたところで、再び彼と目が合った。