ずっと、キミが好きでした。
れおとちゃんと向き合って話す勇気がない。
長い長い沈黙だった。
恐る恐る振り返ると、大雅は太ももの上で拳を固く握り締めたままうつむいていた。
「だったら、俺の気持ちもお前にはわかんねーよ」
桜の花びらが辺りに舞っている幻想的な雰囲気の中、低い声が響いた。
「なにが悲しくて好きな女の恋を応援しなきゃなんねーんだよ。こうやってお前らを向き合わせる場を設けて、背中押してる自分がバカで惨めで情けなくて……どうしようもなく思う気持ちなんて、お前にはわからないだろうな」
「え……?」
「お前みたいなどうしようもないバカを好きになった俺の気持ちが、お前にわかんの?」
「な、に言ってんの……?」
「俺がどんだけお前を好きでも、お前は怜音しか見えてねーし。毎日怜音のことを考えて泣きそうな顔してるお前を見てたら、こうするしか方法がなかったんだよ」
だって……待って。
わけがわからない。
大雅が……私を……好き?
ありえない。
冗談でしょ?
だけど。
視線をあちこちにさまよわせて、チラチラ私を見やる大雅の顔は真っ赤。
「あー、クソッ。言うつもりなんて、なかったのに……お前が……自分だけがツラいみたいに言うから、つい」
「…………」
「成り行きで言ったけど、ムシしてくれていいから。お前の気持ちはわかってるし、どうこうなるつもりもないから」
「か、帰る……」
「ちょ、おい……っ!」
その場にいられなくなった私は、大雅の顔も見ずに走り去った。