ずっと、キミが好きでした。


ちーの言葉に涙が溢れた。


泣かないって誓ったはずなのに、その誓いは破られてばかり。


私の中の時間は、中学の卒業式の日から止まってしまっている。


止まってしまった時間を再び動かすのに必要なのは、相手を想う気持ちと、傷付くのを恐れない心と、ほんの少しの勇気。


背中を押してくれた大雅とちーのために、ウジウジしたままの自分でいるのはやめよう。


情けない自分でいるのはやめよう。


ここで変わらなきゃ、いつまで経っても変われない。


前に進めない。


前に進みたいから、強くなりたいから、私は頑張ってみせる。


もう逃げたくない。



「ちー、私……もう一度れおにぶつかってみる」



そうすることで、きっと何かが変わるよね。


もう一度、まっすぐにれおを想っていた頃のことを頭に浮かべて目を閉じた。



「頑張ってね、応援してる」


「うん、ありがとう!」



ちーの家を出る頃には心が軽くなっていた。


ありがとね、ちー。


大雅にも、会ったら謝らなきゃ。


逃げてばかりの日々から、さよならするんだ。



「あ、そういえば今日は京太君は?」


「さぁ、まだ帰って来てないんじゃない?高校で友達が出来たとか言ってたから、遊んでるのかも。もしくは、デート」


「そっか。よろしく言っといてね」


「うん……って、言ってるそばから帰って来たかも。玄関のドアが開く音がした!下に行ってみよ」



ちーと一緒に1階に下りると、ちょうど帰って来た京太君がリビングに入ったところだった。



「京太」



ちーが京太君の肩をポンと叩いた。


京太君は後ろを振り返り、ちーと手話でひとことふたこと交わしたあと、私に気付いてニコッと柔らかく微笑んでくれた。


あれ……?


でも、待って。


京太君が今着てるその制服……さっきも、どこかで見たような。


深緑色のチェックのズボンと、ベージュのネクタイ。


ブレザーのエンブレムも、同じだった気がする。


京太君は、耳が聞こえなくて……確か、高校は特別支援学校に通ってるって前にちーが言ってた。


耳が聞こえなくて……耳が。


特別支援学校……。


まさか……まさか。


< 161 / 251 >

この作品をシェア

pagetop