ずっと、キミが好きでした。
ちーの言葉に涙が溢れた。
泣かないって誓ったはずなのに、その誓いは破られてばかり。
私の中の時間は、中学の卒業式の日から止まってしまっている。
止まってしまった時間を再び動かすのに必要なのは、相手を想う気持ちと、傷付くのを恐れない心と、ほんの少しの勇気。
背中を押してくれた大雅とちーのために、ウジウジしたままの自分でいるのはやめよう。
情けない自分でいるのはやめよう。
ここで変わらなきゃ、いつまで経っても変われない。
前に進めない。
前に進みたいから、強くなりたいから、私は頑張ってみせる。
もう逃げたくない。
「ちー、私……もう一度れおにぶつかってみる」
そうすることで、きっと何かが変わるよね。
もう一度、まっすぐにれおを想っていた頃のことを頭に浮かべて目を閉じた。
「頑張ってね、応援してる」
「うん、ありがとう!」
ちーの家を出る頃には心が軽くなっていた。
ありがとね、ちー。
大雅にも、会ったら謝らなきゃ。
逃げてばかりの日々から、さよならするんだ。
「あ、そういえば今日は京太君は?」
「さぁ、まだ帰って来てないんじゃない?高校で友達が出来たとか言ってたから、遊んでるのかも。もしくは、デート」
「そっか。よろしく言っといてね」
「うん……って、言ってるそばから帰って来たかも。玄関のドアが開く音がした!下に行ってみよ」
ちーと一緒に1階に下りると、ちょうど帰って来た京太君がリビングに入ったところだった。
「京太」
ちーが京太君の肩をポンと叩いた。
京太君は後ろを振り返り、ちーと手話でひとことふたこと交わしたあと、私に気付いてニコッと柔らかく微笑んでくれた。
あれ……?
でも、待って。
京太君が今着てるその制服……さっきも、どこかで見たような。
深緑色のチェックのズボンと、ベージュのネクタイ。
ブレザーのエンブレムも、同じだった気がする。
京太君は、耳が聞こえなくて……確か、高校は特別支援学校に通ってるって前にちーが言ってた。
耳が聞こえなくて……耳が。
特別支援学校……。
まさか……まさか。