ずっと、キミが好きでした。


子どもたちを送り出したあとは、たまっていた書類整理を始める。


それと、来週の授業の予習もしなきゃ。


1日があっという間に終わってしまい、気付けばもう、れおと最後に逢った日から8年の月日が流れていた。


れおとはここ何年かは連絡を取っていないから、何をしているのかはわからない。


この8年、長かったような短かったような。


色んなことがたくさんあった。



「月城、よかったらこれから飲みに行かね?」


「えっ?これから?」


「おう。給料入ったばっかだし、しゃあなし奢ってやるよ。パーッと行こうぜ、パーッと」


「うーん……行きたいんだけど、まだ仕事が残ってるし」


「明日に回せばいいじゃん。同期のこの俺が、せっかく奢ってやるっつってんのに」


「私は藤里(ふじさと)君とは違って、仕事を明日に持ち越したくないの」


「相変わらず真面目だなぁ。気楽に生きりゃいいじゃん」


「真面目で結構。ってことだから、また今度ね」


「そればっか。本当は行く気がないくせに……」


面白くなさそうな顔をする藤里君に手を振り、仕事に取り掛かる。


定時を過ぎると、ほとんどの先生がポツポツと帰り始めた。


私はまだもう少しかかりそう。


要領の悪さをどうにかしたいけど、手を抜きたくないから結局時間がかかってしまう。


気付けば、外はもう真っ暗。


警備のおじさんにもビックリされてしまった。


はぁ、お腹空いたなぁ。

今日はこの辺で切り上げようか。


「あんまり根詰めんなよ」


「ふ、藤里君……なんで?」


突然ドアが開いたかと思うと、帰ったはずの藤里君が入って来た。


鼻の頭が真っ赤に染まっていて、寒そうに身を縮めている。

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