ずっと、キミが好きでした。
「ねぇ、れお。れおってば」
トントンと腕をつつかれ、顔を上げる。
どうやらずっと名前を呼ばれていたみたいだったけど、全然聞こえていなかった。
しずの声はスーッと胸にしみ込んで入って来るのに、考え事をしてたせいだろう。
「れおはどっか行きたいところある?」
しずはいつも、まっすぐに俺の目を見て話してくれる。
時にはジェスチャーを加えて、わかりやすいように工夫もしてくれる。
そんなしずの優しさが胸をくすぐる。
話の内容を訊き返すことが多い俺だけど、しずと話す時だけは違った。
正直、会話の内容が全部聞こえているかと聞かれたらそうじゃない。
なにが言いたいのか、しずがなにを言っているのか、生まれた時からずっと一緒にいるから、なんとなく雰囲気でわかってしまう。
だから、聞こえなくても会話が成り立つ。
しずがそれをわかっているかどうかは微妙だけど、あっけらかんと笑っているところを見ると気付いてないっぽい。
「それはしずが考えるんだろ?」
俺がそう言うと、しずは「うん。でも……」と意味深に押し黙った。
さっきまでテレビのニュースを見て楽しそうにしていたかと思えば、今度はなんだよ。