ずっと、キミが好きでした。
その横顔があまりにも切なげで、私まで苦しくなってしまう。
「そんなことを言ってくれるのは、しずだけだよ。他の人は、かわいそうな目で俺を見るから」
自虐的につぶやいたれおは、フッと笑って悲しげに目を伏せた。
れおに握られたままの手首に、ギュッと力が入る。
それだけで、れおが今も苦しんでいることが伝わって来た。
そんなことない。
そんなことないよ、れお。
れおはかわいそうなんかじゃない。
自分を責める必要なんてどこにもないのに。
悲しげな顔を見ているのがツラくなって、私はれおの肩をポンと叩いて、ベッドの上から勢いよく起き上がる。
そして、れおの腕を引っ張った。
「急にどうしたんだよ?」
弾かれたように視線を上げたれおは、目を真ん丸くさせた。
「星、見に行こう」
れおの視線はしっかり私の唇を捉えていたから、なにを言ったかは伝わったはず。
それに今は静かな場所に2人きりだから、右耳の補聴器からも私の声は届いたはずだ。
それ以外の場所では、れおが人の言葉を理解するのは唇の動きからが大半らしい。
教室や外では騒音がひどくて、会話はほとんど聞き取れないみたい。
授業中はかろうじて先生の声が聞こえると言っていた。
「星?」
「うん、星!れおんちの裏山に行こうよ」
「見つかったら、こっぴどく怒られると思うけど」
「大丈夫だって!ほら、行くよ!」
私は渋るれおの腕を引っ張って、ベッドから立ち上がらせた。
ほっそりしているけど、ほどよく筋肉がついたれおの腕と体は同年代の男子に比べると大分しっかりしている。
小学校からずっとバスケをしてるから、その賜物かな。