ずっと、キミが好きでした。
背が高くてスタイルがいいれおは、小4までは文武両道でなんでもソツなくこなす天才肌……だった。
小4の夏休みに交通事故に遭い、側頭部を強く打ち付けた影響で聴覚神経が損傷し、左耳の聴力を完全に失ってしまうまでは。
事故の影響は右耳にも及んでいて、補聴器を付けてやっと聞こえるくらいの聴力しかないんだとか。
これは本人から聞いたわけではなく、れおのお母さんから聞いた話。
れおの笑顔に影が見え始めたのは、思えばこの頃からだったかもしれない。
耳が聞こえなくなったことで大好きなバスケが思うように出来なくなり、日常生活にも影響が出始めた。
最初は苦しそうにしてたけど、頑張り屋のれおは一度も弱音を吐かなかった。
聞こえないなりに努力してバスケも続けていたし、勉強も頑張っていた。
ここまで来れたのは、諦めずに続けて来たバスケの存在が大きいと思う。
私の存在も少しくらいその中に入っていればいいけど、どうかな。
「相変わらず、れおんちは広いよね」
「…………」
前を歩いているれおには、私の声は届かない。
時々寂しくもあるけど、わざわざ引き止めて話すような内容じゃないから、そのまま後をついて歩いた。
れおのお父さんは有名な桐生グループの社長で、お母さんはお医者さん。
れおには6歳上のお兄さんが1人いて、国立の有名大学に通っている。
家族みんなすごく優しくて、家に行くといつも笑顔で迎えてくれるんだ。
「あら、しずくちゃん。来てたの?」
「うん、お邪魔してます」
「どこか行くの?もっとゆっくりして行けばいいのに」
玄関を出たところで、仕事帰りのれおのお母さんにばったり出くわした。
とても綺麗で笑顔が素敵なれおのお母さん。