ずっと、キミが好きでした。


私が好きなのは大雅じゃなくて、れおだよ。


さすがに恥ずかしいから、こんなところでは言えない。


いや、こんなところじゃなくても言えないけど。



「ふーん、そっか」



明らかにトゲがあるれおの声。


あ、あれ?


なんかスネてる?


この様子じゃ、完全に誤解してるよね。



「あ、あのね、本当に大雅のことはなんとも思ってなくて」


「別にいいよ、隠さなくて」


「か、隠してなんか」


「大雅は、男の俺から見てもいい奴だと思う」


「だから、そんなんじゃないってば」



違うのに伝わらない。


なにを言ってもれおに信じてもらえなくて、悲しくなって来た。


右耳を触っていたれおは、なぜか補聴器を外してその小さな機械をポケットの中に押し込んだ。



「ど、どうしたの?」



なんで、いきなり補聴器を外したの?


私の言葉はもう聞きたくないってこと?


悪いように思考を巡らせる。



「電池切れ」


「え?電池?」


「うん」


「大丈夫なの?」



補聴器を外して音から遮断されたれおにわかりやすいよう、出来るだけ短く単語でそう口にする。


なんていうタイミングの悪さで電池切れになるの。


せめて、誤解をといてからにしてほしかった。



「なくても問題ないから」



大丈夫だと言うのでそのままデートを続行することになったけど、さっきの名残りからなのか何となくわだかまりが残っている。


だけど今さら掘り返して誤解をとくのもなんだし、また今度説明すればいいよね?


わかって、くれるよね?



この時きちんと誤解をといておけば、あんなことにはならなかったのかな。


今でも私は、この時のことを後悔しています。


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