ずっと、キミが好きでした。
夕方、朝はあんなに空いていたにも関わらず、駅の中は人でごった返していた。
ホームへ続く階段を上っていると、たくさんの人がゾロゾロと階段を下りてきた。
どうやらちょうど電車が到着したらしく、上り専用の階段にもたくさんの人が押し寄せ、まさにお見合い状態。
下り専用の階段があるんだから、そっちを使ってよ!
上りにくいったらありゃしない。
なんて思いながら、人混みを避けて上手に上る。
私たちの前には、3歳くらいの子どもを連れたママがいた。
小さな女の子はママの手を懸命に握って、はぐれないように必死。
だけど、その時ーー。
急ぎ足で階段を下りて来たおじさんと女の子が、勢いよくぶつかった。
その反動で女の子が持っていたうさぎのぬいぐるみが、手から落ちる。
「あ、ウサちゃん……!」
ぬいぐるみを拾おうと、女の子は反射的にママの手からすり抜けて後ろを振り返り、キョロキョロして落ちたぬいぐるみを探す。
だけど次の瞬間ーー。
女の子は、バランスを崩して階段から足を踏み外した。
「危ないっ!」
れおの大きな声が辺りに響いた。
それと同時に、落ちて行こうとしてる女の子をかばうように抱きとめるれおの姿が目に入った。
まるでスローモーションでも見ているかのように、鮮明に映し出されるれおの姿。
そのすぐあと、私が立っている場所よりも遥か下でドサッという音がした。
それは、息つく間もないほど、あっという間の出来事だった。