ずっと、キミが好きでした。
その仕草があまりにも可愛くて、自然と頬がゆるんだ。
女の子は結局最後まで恥ずかしがってママにしがみ付いていたけど、帰りがけにこっちを見て手を振ってくれた。
もうすっかり日は暮れてしまい外は真っ暗。
帰りの電車は比較的空いていたので、2人掛けの席にゆったり座ることが出来た。
あの人混みはなんだったのかと思うほど、電車内はシーンとして静か。
「本当に大丈夫?頭、コブ出来たんじゃない?」
れおの顔を覗き込み、頭のてっぺんに手を伸ばす。
サラサラの黒髪に触れると、れおの体が一瞬ビクッと揺れた。
「なに?」
ビックリしたように目を見開くれおは、状況が飲み込めていない様子。
「んー?コブが出来たんじゃないかと思って」
「コブ?」
確認するように訊き返してくるれおに向かって、私は小さく頷いた。
「軽く打っただけだから、大丈夫だよ。それより、そうやって簡単に触るなって何度も言ってるだろ」
手首をガッと掴まれて、今度は逆にれおに顔を覗き込まれた。
あまりの距離の近さにドキッと胸が高鳴る。
真剣な瞳と赤みを帯びたれおの照れたような顔。
「しずは……俺をドキドキさせるのが趣味なんだ?」
「え……?」
ドキドキ……?
私が、れおの頭を触ったから……れおはドキドキしてるの?
なんで?
どうして?
しかも、趣味って。
それはれおの方でしょ?
何も言い返せなくて黙り込んでいると、今度は後頭部に手を添えられた。