あの日の記憶。~青春の全て~
一番に教室にいたのは咲葵だった。
いつもは私なのに、どうしていつも遅い咲葵がいるのか。
全く検討もつかないけど、すぐにその悩みは解消された。
「茜!あんた本気??」
「え、なんで、え?」
どうやら、あとから話を聞くと
咲葵は私と恋バナをするために早く来ちゃったらしい。
「咲葵さ、心配しすぎだって。
菊智には断っといたって言ったじゃん?」
咲葵は私の言葉を聞いて呆れる、と呟く。
「もう、茜も高校2年生なんだよ?
恋愛しないと、可笑しくなるよ??」
「私には、守ってもらうようなオトコはいらないし。」
「茜!一度きりの高校生活楽しまないと
後になって後悔するよ」
勝手に言ってろと内心思うけど、
ここは私の平凡スマイルでやり過ごす。
「わかったわかった、もう少し楽しんでみようかな。
あははは」
咲葵は、はぁとため息をつくと、ニコっと笑う。
「じゃあ、この1週間で特定の好きな人作って?」
は、はぁぁぁ!?
なにいってんの、このこ!
「む、むり!無理だってば!なにいってんの!咲葵ったらそんな冗談よしてよ!」
「だって、茜が言ったんじゃん。
もう少し楽しんでみようかなって!
それくらいの努力しないと、楽しめないってば!」
咲葵の言ってることが全くわからない。
「恋は青春の全てだよ!茜!」
咲葵はガッツポーズしながら、私を見てくる。
「は、はぁ...?」
そんな時、咲葵のスマホから着信音がなる。
「あ!彼氏からだ!ちょっといってくるね♪」
「はい!?ちょ、まってってば!」
私を見ることもなく廊下に出ていってしまった咲葵。
“恋は青春の全て”
恋をしたことない私には到底分からない言葉だった。