世界を超えて。
大林君の端末を見ると、普段使用されない地下通路だった。かなりの距離がある。文章を読む時間はありそうだ。
全員で並びながらシャッターで外と隔離された校内を歩く。
特進高校だから他の学校よりはセキュリティや耐震性などは高いはずだが、そうとは思えないほど校内は荒れている。
地下に入った所で私はデータを読み始めた。
文章の内容は理解したくないものだった。
何が起きたのか、今の状況、今後の予定、簡潔にまとまっているのに頭に入ってこない。
今までの日常はどこに行ってしまうのだろう。 そう思うと自然に涙が出た。
「智ちゃん。大丈夫?泣くなよ。なんとかなるんでしょ?」
萌々がハンカチを差し出しながら背中を撫でてくれる。
「そうだな。なんとかしよう!泣いてても仕方ない!」
自分に言い聞かせるように大きな声を出した。
「中村さんのそういう強い所がいいと思うけど、周りを頼ってよ」
いつの間にか隣にいた増田君が励ますように方を軽く叩く。
そうだ。私はきちんと増田君に返事をして皆で卒業するんだ。大丈夫。なんとかする。