・いつまでも、キミを想う
不意に、カフェ店内の壁に掛けられていた時計が目に留まった私は、慌てて席を立つ。
「涼香ちゃん?」
「ごめん、私これからクライアントと約束があるのよ」
悪いけど、先に帰るね。と隣の椅子に置いていた荷物を手に取る。
「行ってらっしゃーい。仕事頑張ってね」
「ありがと。じゃあ、日曜にね」
顔の前で「ゴメン」と手を合わせた私は、繭にヒラヒラと手を振り見送られた。
私はダッシュでカフェを飛び出した。
繭と会う約束をしたのが駅前のカフェでよかった。
今から電車の飛び乗れば、どうにかクライアントとの約束の時間に間に合いそう。
改札をくぐり、ホームに続く階段を駆けあがる。
一生懸命階段を上っても、ヒールを履いている状態では、たいしてスピードも出ていない。
電車が発車するベルが鳴り、駅員が車掌に向けて自動ドアを閉める合図である笛を吹く音が耳に聞こえた。
「嘘でしょ? 次の電車が来るまで待たなきゃいけないの⁈」
駅に着いたらタクシーに乗り、移動する時間を考慮したら、かなりギリギリというところだろう。
少しでも余裕な時間を確保するなら、発車しようとしている電車に飛び乗らなければ間に合いそうにない。
「うわーん、繭と話してると時間忘れちゃうんだよなぁ」