・いつまでも、キミを想う
階段から電車のドアが閉まろうとしているのが見えた。
私は、とっさに電車に向かい叫んでしまった。
「その電車、待ってー‼」
恥も外聞もない。
手を伸ばし、閉まりかけている電車に駆け込み乗車しようと試みる。
電車のドアは、プシューッと静かに閉まり。
何事もなかった様に発車した。
私は茫然と立ち尽くしている。
「駆け込み乗車は危ないですよ」
頭上から振って来た優し気な声が聞こえ、我に返った私。
紺色のスーツに、ストライプのシャツがチラッと見える。
色を合わせた様にブルー系のネクタイが目に留まった。
「大丈夫ですか?」
気付けば、見知らぬサラリーマンに手首をつかまれた状態の私。
「は、はい。はい、大丈夫です」
動揺しつつ答えた私は、慌てて男性の手から掴まれていた手首を外す。
そうだ。
駆け込み乗車をしようとした私の目の前で、閉まりかけていたドアから手を伸ばし、私の手を取り車内へ引き入れてくれたのは、この人だ。
あまりに私が大声で叫んでたから、仕方なくドア付近に居たこの人が私を助けてくれたのかもしれない。