・いつまでも、キミを想う
「……ふっ。何を妄想してるんだろう」
私ってば、バカみたいだ。
あんな一瞬の出来事だけで、こんなにも想像を膨らませちゃったりして。
そうだ、これもきっと繭の恋バナを昔から聞かされていた影響もあるだろうな。
繭の話を聞いているだけで、一緒に恋愛している気分になってしまっていたんだから。
男性の降りた駅から、二駅ほど過ぎた駅で電車を降りタクシーに乗り込んだ。
クライアントが指定したのは、何故かシティホテルのラウンジ。
不審に思いながらも、タクシーを降りた私は指定されたホテルのラウンジに足を踏み入れる。
既に先に到着していたクライアントを見つけた私は、小走りで駆け寄った。
「二階堂様、遅くなり申し訳ありません。お待たせいたしました」
「いえ。僕も今来たところですよ」
大人の対応ですね。
ずっと私を待っていてくれたことは、テーブルに置かれた灰皿に残されたタバコの吸い殻の多さで分かります。
ソファに座り、私はA4の封筒から書類を取り出す。
二階堂様は、私が初めて仕事を担当した大切なクライアントだ。
テーブルの上に書類を広げようとした時、その手を握られ制止された。
「?」
「この続きは、部屋でしましょうか」