・いつまでも、キミを想う

「申し訳ありません」


正座した状態で、頭を下げる私に二階堂様は今の仕事の契約破棄を口にした。

当たり前だ。

彼のプライドも傷つけた私に、仕事を続けさせてくれるわけがない。


でも。それでも構わない。

自分の気持ちを曲げてまで仕事を取ろうなどとは思わないし。

第一、心から愛されていないのが分かっているのに抱かれるなんて嫌だ。


「女なら武器を使うのも、ひとつの作戦だともうけどな」


悔しい。

初めから、そのつもりで二階堂様は私に仕事を依頼していたのだろう事が垣間見えた瞬間だった。

悔しくて涙がこぼれそう。


でも、こんな人の前で涙は見せたくない。


黙って立ち上がり、二階堂様には失礼を詫びて仕事の話を口にする。


「この仕事は、うちの事務所が請け負った依頼です。私の代わりに受け持たせていただく担当に関しては、後日改めて上司の方から二階堂様にご連絡差し上げます。引き継ぎはしっかりとさせていただきますので、ご安心ください」


椅子に置いていたバッグを手に取り、二階堂様に一礼し出口に向かう。


なんだか、負けたような気分。

女が男性と対等に仕事は出来ないって事なのだろうか。

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