・いつまでも、キミを想う

碧人の記憶が消えない様にと、レイ専用のチョークを使い細工したレイは、どんな現実に変わってしまったとしても碧人が私を探せるように望みをかけた。


私が「レイ」の名を碧人から聞かされた時、全ての記憶を呼び起こせるようにと。

レイは、私の記憶と引き換えに自らの姿を葬り去ると黒板に記したのだと。


「なに……それ」

「レイは自分の命と引き換えにしても、涼香には覚えていてほしかったんだ。思い出してほしかったんだよ」

「それじゃ、レイはっ」


高校生の頃から、たまに感じていた不思議な空気感は。

あれは……レイ。

私には見えていなかったけれど、レイは確かに私のそばに居た。

居てくれたんだ。

いつも私を見守っていてくれた。


だから、嫌でも分かってしまう。

レイは、もういないのだと。

私が記憶を取り戻してしまった瞬間、レイの姿は消えたのだろう。


「レイ、もう居ないの? 本当に、どこにも居ないの?」


もう一度会いたい。

もう一度だけ会って、レイに伝えたい。


碧人を好きになって。

あなたに出逢い、碧人に気持ちを伝える勇気をもらった。

いっぱい、いっぱい「ありがとう」を言いたいのに。

直接伝える事が出来ないなんて。


< 134 / 136 >

この作品をシェア

pagetop