・いつまでも、キミを想う
グスッと鼻をすする私に、碧人はチョークを握らせると、黒板の前に私を立たせた。


「な……に?」

「涼香の記憶が戻ったら、涼香のチョークを使い切ってほしいってレイに頼まれたんだ」


碧人は、私の手に自らの手を添えると黒板に向かいチョークを走らせた。

ゆっくりと、力強く。

大切に、一文字ずつ記してゆく。

背中に碧人を感じながら、私は黒板に目を向けていた。


「あの日さ、電車にお前が駆け込んで来た時は、マジで驚いたよ。記憶が消えなかった俺は、涼香をずっと探していたのに見つけられなくて。さすがに半分諦めかけてた時、突然俺の目の前に現れたんだから」

「私を助けてくれた、あの日? どうして、すぐに教えてくれなかったの?」

「突然の再会すぎて、言葉失ってたんだよ。そう。あの再会は、きっと涼香を見つけられない俺に、レイからのサプライズだったんだろうな」


なんて、碧人は照れながら話してくれているけど。

何から何まで、私はレイに世話を焼いてもらってばかり。

レイが消えてしまう、その瞬間までも。


「レイがチョークを与えた人間の中で、私が一番の問題児だったかな」

「かもな」


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