・いつまでも、キミを想う
リビングでテレビを見ていたお母さんに声をかけ、寝る頃までには帰ると告げる。
「それじゃあ、ご飯は外で食べてくるのね」なんて、あっさりと手を振られた。
嘘みたい。考えられないよ。
17歳の私には、遊びに行くと言えば、誰と遊ぶのかとか。
門限は何時だの、夕食までには帰れだの、出掛けるまでの準備をしている間、かなり口煩くお小言を食らっているのに。
それが、27歳にもなるとご飯の有無を確認される位で見送られてしまうのか。
「い、行ってきます」
中身は17歳の私は、お母さんの対応一つに驚きを隠せない。
大人って。
大人って、凄い自由じゃん!
玄関のパンプスを履き、勇んで家を飛び出した。
さあ、これからどんな事を目にするんだろう。なんて、ウキウキと心を弾ませながら。
駅へと向かう歩道。
大きな変化はないけれど、お店だった場所は建て替えられ、アパートになっていたり。
古ぼけた、お化け屋敷の様だった民家が、白亜のお城のような、立派な住宅に変貌を遂げていた。
「でも、道は変わってない。迷子になる事はなさそうだなぁ」
青い空に、ふんわり浮かんでいる白い雲。
空だけは、今も昔も変わらない様に見えていた。