・いつまでも、キミを想う

男の人に掴まれている腕が痛い。

どう頑張っても振り払えない腕は、ズキズキと痛みが増す。


「その手を離してもらえますか?」


横断歩道前で、すったもんだしている私と男の人の間に割って入る人の声がした。

気づけば、私は割って入って来た人の背中に隠されている。


「なんだよ、お前。……今、涼香が付き合ってる男ってのは、あんたの事か」

「だったら、何なんですか? あなたとは、とっくに終わっていると聞いていますが。まだ涼香に付きまとっているんですか?」


へ? 私の……今付き合ってる人なの? で、あっちが元彼?


残念ながら、見えているのは背中のみ。

お顔は拝めません。ってか、私って……モテ人生してるの? すごい!


なんて、感心している場合ではないのだ。

助けてもらえたとはいえ「今彼」と「元彼」が目の前で、私を巡って口論している。


私ってば、どんな付き合い方をして、どんな別れ方をしてたのよ。

我ながら自分を叱りたいくらいだ。


そんな事を背中に隠れながら考えていた私の手を、「今彼」が優しく握る。

手を握られ、見上げた私は。


その背中に、見覚えがあったのだ。


「行くぞ、涼香」


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