・いつまでも、キミを想う
「え?」
声をかけられたと同時に、手を引かれ。
私を捕まえたと言った男の人から逃げる様に走り出す。
横断歩道が青になる瞬間の出来事だった。
右往左往する横断者達を縫う様に走り抜ける。
私の手を引き、前を走っているのは……。
「碧人⁈ 碧人なの⁈」
目の前の背中に声をかけると、走っていた足が速度を落とす。
横断歩道を渡り切り、男の人が追いかけてこない事を確認し、ゆっくりと足を止めた。
明るめのブラウンの髪は、太陽に透けていて。
大人びているけど、17歳の面影が残る、その顔を。
私が見間違うはずがない。
見るからに、カッコイイ大人の男性に成長している碧人に、思わず見惚れてしまう。
「もう大丈夫かな」
髪をかき上げる、綺麗な指先。
いつも、教室の一番後ろの席から、私が眺めていた姿と重なる。
やっぱり、私の好きな碧人だった。
「碧……人。どうして?」
「は? 何言ってんだよ。待ち合わせしてた場所で待ってたのに。俺の目の前を知らん顔して通り過ぎたのお前だろ。俺は追いかけてきたの!」
「待ち合わせ……碧人と? 私が?」
「そうだよ」
それって、デートの待ち合わせしてたって事?
27歳の私達は、付き合ってるの?
レイの馬鹿。
余計な事しなくても、碧人と私はうまくいってるじゃん。
「行こう。時間がない」
「え? どこに?」
27歳の碧人に再会出来て、嬉しさのあまり普通に尋ねてしまった私に、碧人が呆れた顔をして言った。
「婚約指輪、今日取りに行く約束だったろ」