・いつまでも、キミを想う
「おい、いくら幼馴染でも人前では止めろよ。どこで誰に見られてるか分かんねぇんだから」
腕を絡めた私の手から、スッと腕を抜き取った碧人は、少し困ったような表情に変わっていた。
それが、何を意味しているのか。
中身が17歳の私には、スグに感じ取る事が出来ない。
「碧人?」
「繭に見られたら、いくら幼馴染だからと言っても誤解されるだろ」
碧人の口から飛び出したのは「繭」の名だった。
野々下繭。
17歳の私の前で、碧人に告白した恋敵。
彼女の告白現場に出くわしてしまったせいで、私は碧人に気持ちを告げる前に失恋したのだ。
全ては、感情的になった繭を、放課後の教室から碧人が連れ出したから。
不戦敗した私は、妖精のレイと出会い。
私が繭の告白を無かったことにしたはずなのに。
どうして、27歳にもなって繭の名前を聞かされているのだろう。
そして、彼女の名前を聞き、ビクついている私が居る。
「繭もさ、涼香と俺が幼馴染って事は理解してくれてる。でも、余計な心配や不安を抱えてほしくない。繭は綺麗な心のまま、ウエディングドレスを着てほしいんだ」
碧人の言葉が、私の胸を苦しく締め付ける。
27歳になるまで。
私は、いったい何をしていたんだ。
せっかく、繭の告白を帳消しにしたくせに。
相変わらず片思いのまま、10年間を過ごしていたという事か。