・いつまでも、キミを想う
それまで声も姿も見せてくれなかった妖精のレイが、水色のワンピースを着てフワフワなブロンドの髪を揺らし、透き通る羽を羽ばたかせながら、私の前に姿を現した。
「レイ、どうして今まで……。私、何度も呼んだのに」
「涼香、久しぶりね。10年ぶりになるのかしら。見て、10年前はお団子にしていた髪を、今は下ろしてるのよ。似合うでしょ」
ふふっ。と笑いながら、私の周りを飛び回るレイは、なんだかやけに楽しそう。
目の前で、ファッションショーをしているみたいだ。
「教室の外で呼ばれても、私は動けないのよ。私は、学校の校舎に住み着いてるんじゃなくて、この教室に住み着いてるの。黒板と七色のチョークを守りながらね」
レイは、とても懐かしそうに伸ばした指で私の鼻先をチョンと突く。
私には昨日やさっきの事でも、ここに居るレイは10年後のレイなのだ。
懐かしい表情を浮かべられるのも無理はないか。
10年ぶりの再会になるんだもんね。
そりゃ、懐かしむわけだ。
「レイ、呑気な事言ってる場合じゃないの。さっきまで煩いベルが鳴ってたでしょ。あれは警報機の音で、私が侵入したからで……」
「うん、分かってるわ。あなたは、17歳の涼香なんでしょ」