・いつまでも、キミを想う
レイの言葉に、私は驚きながらもコクリと頷く。
見た目が27歳でも。
妖精のレイには、中身が17歳の私だと分かっているんだ。
「どうしよう、レイ。七色のチョークのスペアって無いの? 持ってたら、それを貸して」
レイに向かい、掌を広げた私に。
「それは、無理よ」とレイは首を振った。
一人の人間に与える事が出来る、七色のチョークは一本のみ。
要するに「私専用のチョーク」は、無くしてしまったチョークのみということだ。
新しくチョークを渡せば、妖精界の規定違反としてレイの身体は消えて無くなってしまうという。
「困ったわね。今までも大切に使ってくれる子に渡してきたから、まさか紛失させる子がいるなんて予想外だったわ」
頭を抱えるリンの身体を、私は両手で捕らえる。
レイは私の行動に驚き、羽をばたつかせ、捕まえた手から逃れようとジタバタした。
「お願いレイ、私はまだやり残してる事があるの。帰らなくちゃいけないの。助けて」
必死に頭を下げる私に根負けした様に、レイは大きなため息をつき、静かに口を開いた。
「こうなった責任は、チョークを渡した私にもあるしね。10年後、あなたに会える事を楽しみにしてたわ。27歳になった涼香の顔が見れたから、私はもう思い残す事は無いし」