・いつまでも、キミを想う
どうしようもなくなった私は、教室にポツンと立ち尽くす。
誰も居ない校舎は、静まり返っていて。
だからか、余計に帰りたくなる。
なんとなく、自分の座っていた一番後ろの席に近づき。
しまわれていた椅子を引き、腰かけた。
視線を斜め前に移すと、いつもココから眺めていたのは、碧人の背中。
この席からだけじゃない。
いつだって、どんな時だって、私は碧人を目で追っていた。
幼稚園の入園式で、お母さんと離れるのが嫌で泣いていた私に、持っていたハンカチを貸してくれた時から。
碧人は私にとって、初めての「優しい男の子」。
幼い私は、単純に碧人の事が好きになった。
小学校の6年間だって。
何度か違うクラスになってしまったりもしたけど。
その度に、休み時間になると碧人の姿を探していた。
スイミングなどの習い事も。
「幼馴染」として、碧人と一緒に行動を共にしていたことが多い。
なにをやらせても、そつなくこなす碧人を尊敬した。
気づけば。
私の瞳は、いつも碧人しか映っていなくて。
碧人の事を「好きなんだ」と自覚した。
中学校時代には、部活に励む碧人が眩しくて。
それが「恋」だと気づいた時。
私にとって、碧人は「好きな男の子」から「初恋の相手」となっていた。