・いつまでも、キミを想う
碧人は、教室の入口からゆっくりと私に向かい歩いてくる。
徐々に近づく碧人と私の距離。
碧人が一歩、足を前に出す度に、胸が高鳴る。
そして、身体中が熱くなっている。
「大切な場所に行くって言ってただろ。これ、お前の? 床に転がってたんだけど」
碧人が腕を伸ばしコブシを差し出し、目の前で握っていた手を開く。
光り輝いている碧人の掌を覗き込む。
それは、碧人の掌にチョコンと乗った七色の輝くチョークだった。
「これ……」
何ということだろう。
私は碧人と過ごした、さっきの部屋に大切なチョークを落としてきていたのだ。
輝くチョークを見つけた碧人は、私を追いかけて学校に。
この教室に、来てくれた。
「学校に着いたら、凄い音で警報機が鳴り響いてるし。涼香が忍び込んだんだ、ってピンと来た。野球部の部室裏に出来てた金網が壊れた穴から入ってさ」
チョークを見つめる私の手を取った碧人は、私の掌を上にしチョークを置く。
握りしめた手の中には、もう二度と手にする事が出来ないと思っていたチョークが、私の元へ戻って来た。