・いつまでも、キミを想う
「保健室の窓から職員室に向かって、警報機のベルを消したんだ。で、タイミングよく職員室に警備会社から確認の電話が鳴って、教師に成りすまして事なきを得た。というわけ」
「ありがと……。ありがとう、碧人」
チョークを拾ってくれて。
私を、追いかけて来てくれて。
今の私には「ありがとう」と言う他に、碧人に言える言葉が見つからない。
碧人は、私の頭に手を乗せ。
優しく頭を撫でた。
その瞬間、私の瞼は熱くなり、涙腺が崩壊する。
「……大事なチョークだもんな」
うん、うん。と頷きながら、崩壊した涙腺からは、滝のように流れ落ちる涙。
堪えようにも、もう堪える事さえ出来ない状態。
チョークが手元に戻り、17歳の自分に戻れる安堵感と、碧人の優しさ。
そして、いつだって碧人が好きだと実感してしまう気持ち。
「学校に何の用があったんだよ。忘れもの? と言っても、10年も前に過ごしてた教室に忘れ物なんか、あるわけ無いか」
碧人に尋ねられても、全て正直に話すわけにはいかない。
話したところで、信じてもらえるかもわからないのだ。
「妖精のレイに出会った」辺りから話そうにも、そもそも碧人にはレイが見えない。
私だけに見えているレイを、碧人に紹介して説明することは不可能に近い……。