・いつまでも、キミを想う
「涼香?」
「……うん。忘れものね、見つかったの。だから、もう帰る」
涙をぬぐい、椅子から立ち上がった私を、碧人は突然抱きしめてきた。
碧人の胸の中に居ながらも、私は碧人の背中に手を回す事が出来ない。
両手は、下におろしたまま。
「帰れるのか? 帰って、いいのか?」
私に訊ねる碧人の力が強まり、胸が苦しくなる。
碧人の腕の中から抜け出そうと、私は碧人の胸に手を当てた。
そして、碧人と私の身体の間にある腕を、目いっぱい伸ばす。
「帰るよ、碧人! いつまでも校内に居たら、不法侵入で本当に捕まっちゃうかも。そしたら私達、もう未成年じゃないから。逮捕でもされたら、A君、Bちゃんじゃないんだよ。名前が出ちゃう」
「……ぷっ。なんだそりゃ」
「笑ってる場合じゃないってば。私は保健室の窓ガラスも割って侵入してるんだから。立派な犯罪者になっちゃう」
碧人の身体を回れ右させ、私は碧人の背中を押しながら教室を出ようと廊下に向かう。
チョークが手元に戻ったけど。
碧人が一緒に居る状態で、碧人の前でチョークを使うわけにはいかないし。