・いつまでも、キミを想う
私は黒板に書きかけていた願い事を、黒板消しで速攻消す。

そして碧人を追い、廊下に出る。


碧人は既に、開かない画鋲ケースと戦っていた。


「碧人、それ」

「離れてろ。怪我するぞ」

「碧……人? なんで私が顔に怪我するって知っ……」

「前に使った時も開け辛くてさ。画鋲まき散らしたことあったんだ。また画鋲ケースが弾け飛んで、涼香の目にでも入ったら大変じゃん」

「あ……。うん、うん。そうだね」


今の碧人が知っているわけがない。

私の怪我した頬に、碧人がキスをしたのは、この後の出来事だった。

碧人と共に廊下に出ていなければ、そんなハプニングさえ始まらない事なのだ。



私が帰ってきたのは、あの日の放課後。

繭が碧人に気持ちを伝えた日。

私の失恋が決定した日。

レイと出会った日。

繭の告白を無かったものにした日だ。


私は、あの日の放課後をやり直してる。


やっぱり、今日を変えないと未来も変わらないという事なの?


「私、模造紙押さえてるよ」


クルクルと丸められた模造紙を広げ、私は届かないながらも背伸びをして壁に模造紙を広げ押さえる。


ちょっと前に体験した状況とは、少し違っているけれど。

二人で模造紙を張る行動そのものは、変わってない。


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