・いつまでも、キミを想う

それはきっと、27歳の私の身体を借りて碧人に抱かれたからだ。

キスをされるよりも前に。

もっと、それ以上の事を碧人と体験してしまったから。



……なんて。私はバカか。

レイが言っていたじゃない。

あれは、私の幻想。半分は私の願望だと。


でも、確かに触れられている碧人の手の感触。

胸の中で感じる安らぎは。


27歳の時も、今も、同じように肌で感じられる。

感じ取れているのだ。


それを、幻想だ、願望だと言われても信じられない位、鮮明に覚えている感覚は。

どう説明すればいいんだろう。


近づく碧人の唇を、待ち構える様に目を閉じて待つ。

お互いの気持ちを確認し合っていないから、と拒否する気持ちになれないのは、私が碧人を好きだから。


17歳の碧人の気持ちが分からなくても。

私の片思いでも、碧人にキスしてほしいと思うからだ。



静かに優しく重ねられた碧人の唇は、少しぎこちなくて。

27歳の碧人がしてくれた、スマートなキスからは想像できない位、へたっぴに感じる。


「……碧人」

「ん?」

「もっと、練習しないとね」

「はぁ?」

「だって……」


これじゃあ、27歳の碧人になるまでには相当努力が必要じゃない?


……とは、さすがに言えなかった。


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