・いつまでも、キミを想う
水曜日。
変わらない日常が戻っていた。
相変わらず、教室の一番後ろの席から私が眺めているのは、斜め前の碧人の背中。
けれど。
あの日、キスを交わした私達の仲は、少しだけ変わっていて。
私の視線に気づいた碧人は、当然の様に振り返り、私を見る。
そんな碧人に、恥ずかしくて目を逸らしていた私ではなく。
少しだけ微笑み、周囲に気づかれる事無くアイコンタクトを取っている。
というのは、嘘で。
相変わらず。と言ったところだろうか。
碧人と目が合うだけでも、キスしたことを思い出し、恥ずかしくなってしまう。
ゆえに、私は慌てて碧人から目を逸らし下を向いた。
「迷ってないで、さっさとチョークを使えばいいのに」
私の耳元で、小さく囁く声の主は。
授業中だというのに、お構いなしに声をかけてくる。
「でも……」
その声に答える様に、私は左肩に目を向けた。
小さな妖精「レイ」は少し苛立っているように、私の肩に腰かけ。
腕組をし、足まで組んでいる。
たいそうご立腹なレイ。
その原因は、私。
今の碧人と私の現状に、不満気なのだ。
せっかくレイの力を。
チョークを使わずに、碧人とキスまで交わしたくせに。
その先、まるで進展していない事が気に入らないと言う。
確かに。
碧人とは、「好き」とか「付き合おう」とか、ハッキリとした話をしたわけじゃない。
今の状況は、ただ「勢いでキスをした二人」だということだけ。