・いつまでも、キミを想う
「今ならチョークを使って願い事を書いちゃえばいいのに」
「うるさいな。使う時が来たら使うわよ」
肩に乗っているレイを、シッシッと払いのける。
レイは逃げる様に私の肩から飛び降りた。
透き通る羽は、日中の太陽光に照らされ輝きを増し、キラキラと光っている。
10年後のレイは、お団子姿ではなくフワフワな髪をなびかせていたっけ。
自由に教室内を飛び回っているレイに、誰も気づいていない。
まぁ、見えていないんだから、当たり前なんだけど。
なんて。
授業を進めている先生の頭の上に乗って、いたずらしているレイを眺めながら。
私は、ふと疑問に思った。
レイの他に、妖精っていないのかな。
今も昔も。
レイはたった一人きりで、この教室に住み着いていたの?
だとしたら、家族は?
友達は? 恋人は? レイには、そんな相手はいないのかな。
居ないのだとしたら、このままずっと。
10年後も。その先も。
レイは独りで、たった一人きりで毎年変わる生徒達の顔ぶれを見ながら過ごし。
黒板とチョークを守りながら、教室に住み続けるの?
そんな事を考えていた私は。
楽しそうに、自由に教室内を飛び回っているレイが、不憫に思えてきてしまった。