・いつまでも、キミを想う

あぁ。

繭の告白現場に偶然出くわしてしまった時と同じだ。


私の目の前には、碧人と。

碧人を愛おしく見つめる繭がいる。


場所は違えど、苦しい気持ちは変わらないんだ。


ううん。

あの時より私の心は、もっと苦しくなっている。


この場に居たくない気持ち以上に、いっそのこと消えて無くなってしまいたい。

こんな気持ち、耐えられない……。


「あの、私……。か、帰るね。お邪魔しましたっ」


二人を屋上に残し、ダッシュで逃げようとした私の手を、ギュッと繭に掴まれた。

捕まれた事に気づき、私は足を止め振り返る。


嫌でも視界には、碧人と繭が映る。


見ていたくない。

そう思っても、私の手は繭に拘束されてしまっている。


逃げ場を失った私は、とっさに碧人に救いを求めた。


碧人なら、助けてくれると思ったのに。

なのに。

碧人を見つめても、碧人は私から視線を逸らしたのだ。


どうして?

どうして助けてくれないの?


呼び出された時点で、なんとなく予想は出来て、屋上に来たんでしょ?

碧人は、私に繭の告白を聞かせるつもり?


「涼香ちゃん、約束だったでしょ。居てよ」


逃げようとする私を睨みながら、この場から逃げられない様に私に告げる繭。

私は、もはや逃げる事はできないみたい。


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