・いつまでも、キミを想う

「これは妖精の。つまり、私専用のチョークよ。コレを使えば、私の姿は消えて涼香の記憶からも消える。全てなかった事として、リセットするためのチョークなの」


全てなかった事として。とレイに告げられ、その意味がやっと分かった。

レイとの出逢いも、私の記憶も、碧人との出来事も。

何もかも、全て。

初めから存在さえも、しなかったことになるという事だ。


「どこまでリセットされてしまうかも分からない。涼香と碧人が出逢う事さえ無い人生になってしまうかもしれない。そうなれば、今までの事も全て無駄になっちゃうかもしれないんだよ」


それまでして、お互いが関係していた事を忘れずにいたい?

偶然に出会った妖精との事なんて、忘れて。

好きだった碧人とのこれからを選んだ方が、私のためだというレイは。

口では、そう言いながらも。

その大きな瞳に、涙を浮かべているから。

私のために言ってくれているのだと思うと胸が苦しくなる。


「……レイ、私は……」

「碧人だってそうよ。今、ここにオークが居ないのは何でだと思う?」


言われてみれば、10年後のオークを一度も見かけていない。

オークは碧人と出逢い、碧人にチョークを渡したのだから、この場に居てもおかしくないはずなのに。

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