・いつまでも、キミを想う
「あと一回か。これで戻るしかねぇか」
「待ってよ。私はレイのこと忘れたくなくて、私の事を忘れてほしくなくて。その方法を教えてもらいに来たんだよ? これじゃ、何のために10年後に来たのか分かんないじゃない」
碧人の両腕を掴み、私は出来る限りの事をしたいと訴えた。
けれど、レイも碧人も首を縦には降らなかったのだ。
「涼香、これは決められたルールなの。私の事なんかスッパリ忘れても大丈夫よ。涼香なら、碧人と二人で幸せになれるから。私が保証する! 二人なら大丈夫」
「ヤダよ」
駄々をこねる子供みたいに、私はレイと碧人を交互に見る。
「涼香! 言う事聞いて! 何のために、私がチョークを渡したと思ってるの? 全て、碧人とのためにだよ。全部、なかった事にしたいの?」
碧人と出会う事さえ無い人生になりたいのか。とレイは私に厳しく告げた。
分かっている。
分かってるよ、私だって。
碧人が好きだ。
もう苦しい想いなんかしたくない。
碧人と離れたくない。
レイとの思い出を選んだら、碧人とは出会う事のない人生にリセットされてしまうかもしれないという可能性がある事も。
けど。
それでも、私は両方諦めたくない。