眠りの森のシンデレラ
「どうした琶子、顔が引き攣っているぞ。とにかく今日は俺から離れるな」
琶子の隣でゆったり寛ぐ清が小さく囁く。
「言われなくても……離れません! こんなややっこしくて恐ろしい場所、一人でいられません!」
離れない……か、なかなかグッとくる台詞だ。
それにしても……と清は琶子を盗み見る。
本当に綺麗だ。化粧一つでこれだけ変わるとは……。
いつになくソワソワする気持ちに負け、清は琶子の方に手を伸ばす。
そして、不安気にパソコンの画面を見つめる琶子のその頬に、ソッと触れる。
琶子は驚いた表情で、何をするの? と清を見る。
「嗚呼、何があっても離れるな! 必ず俺がお前を守る。約束だ」
そう言って、清は琶子の方に身を乗り出すと、彼女の唇にフワリと口づける。
則武も裕樹もパソコン画面に夢中で全く気付いていない。
琶子は目を見開き、清の顔を見つめる。
「……今の……今のって……キス?」
「キスというほどでもないが、お前にとってはファーストキスかな」
清は、だろ? というようにニヤリと笑う。
途端に琶子の頬が真っ赤に染まる。
「知っていて、どうして? 何てことするんですか!」
則武と裕樹がいなかったらビンタものだ! とブルブル震える右手の拳を左手で抑える。