眠りの森のシンデレラ
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清の言葉通り、五分ほど走ると、木々のトンネルは忽然と消え、眩い光の中に抜けるような青空と色鮮やかな風景が現れた。
青々とした芝と生垣が、シンメトリーに整備されたフロントヤードは、今を盛りと咲き誇る色とりどりの花々に彩られ、更にその先には、絵本の挿絵にも似た古城が威風堂々と建っていた。
「おい、本当に姫が住んでいそうだな」
壮観な景色の中をリムジンは悠々と進んで行く。
「これをシェアハウスにしているって! お前馬鹿? ビップ専用のホテルにしようぜ」
則武の脳内電卓が再び激しく動き出す。
「ルネサンス様式のプチシャトー。本物だね。美しい外観だ。庭も建物も手入れが行き届いている」
裕樹の目が輝く。
「美観を維持できているのは、金成不動産のお陰だ」